月刊J-LIS 2020年8月号

こちら「八雲町」情報化本部 職員が10年以上ブログを運営 情報化への課題と工夫を発信

八雲町と情報担当者の紹介

 北海道八雲町は、北海道南西部()(しま)半島の中ほど、観光地函館市から北に約80㎞、車でおよそ1時間半の距離に位置する町です。平成17年10月に渡島半島西側の八雲町と東側の熊石町が新設合併し、半島を横断する形で「新」八雲町が誕生しました。これにより人口は約1万6,000人、面積は約950㎢となっています。またこの合併により、日本で唯一の太平洋(内浦湾)と日本海に面する自治体となったことから、新たに郡名を(ふた)()(ぐん)とし、「北海道二海郡八雲町-太平洋と日本海 ふたつの海を持つまち」をキャッチフレーズとしています。
 八雲町における情報部門としては、平成13年、合併前の旧八雲町に情報化の専属チームが設置され、現在は政策推進課情報政策係として、職員3名体制(専任は2名)で情報化を担当しています。主な業務内容は町全体の情報化の推進、庁舎内の各種システム・ネットワーク・端末等の導入や保守など、他の自治体の情報部門とほぼ同様かと思います。
 また、平成21年から町ウェブサイト内で情報化担当職員によるブログ「にわかSEは大忙し!」※)を運営。これまで書き記してきたエントリーは2,000件を超え「ブログを見て電話したのですが」といったお問い合わせも多く、最近では関西圏の方とも交流を持つなど、積極的に情報発信を続けています。

庁内の情報化について

 これは小規模自治体の特徴かと思いますが、教育部門や病院部門など、通常は独立した情報化チームが存在していてもいいはずの部署に、残念ながらチームが存在せず、我々が文字どおり情報化業務の「すべて」を管轄している状況です。庁内では「次期セキュリティ強靭化モデル」の検討や「町内の未光エリアへの光ファイバ整備」、新型コロナウイルス感染症対策として広がりを見せる「ウェブ会議の実施支援」、さらには数年後に予定されている「新庁舎への移転」など課題が山積みですが、それに加えて昨今話題の「GIGAスクール構想の実現」に向け、設計から工事実施、システム・ネットワーク運用までを一手に請け負い、また病院の「電子カルテ更新」にも関わるなど、専任職員2人では到底処理しきれないほどのボリュームです。
 本稿では、「職員数が少ない中での課題とそれに対する工夫」について書こうと考えていましたが、いざ冷静になってみると、「どうやって仕事を回しているんだろう...」と考え込んでしまいました。そのくらい、日々目の前の仕事をこなすだけで精一杯な状況です。さらに、我々は専門職ではなく「一般行政職」の事務職員です。そんな職員が日々悩みながら、壁にぶつかりながらも一歩ずつ前進(できていればよいのですが)していく姿。そんな滑稽な姿を見せたくて、前述のブログを書いています。
 また、本町は広大な面積を誇り(全国35位)、町内に点在する公共施設に出向くだけでもかなりの時間がとられてしまいます。何かトラブルが発生し、一度現場を見に行って、それから道具を用意していたのでは1日で仕事が終わらないので、あらかじめ大量の道具と資材、そして我々が「古文書」と呼ぶ、部署に代々伝わる分厚い資料を手に現場に向かいます。当然のことながら一発勝負での対応(解決)が求められ、時には「この仕事は行政の仕事なのか?」と疑問を感じながら作業することもあります。いつしか現場のスキルが向上し、ちょっとした工事であれば自営で行えるようになりました。しかし、こうした対処方法も考えもので、仕事が個人のスキル頼みになり、職員が定期的に異動してこないような「特殊」な部署になってしまいます。そんな中で、あの出来事が起きました。

ブラックアウト

 平成30年9月6日未明、北海道胆振東部を震源とする震度7の地震、そしてほどなくして北海道全域の停電「ブラックアウト」が発生しました。言うまでもなく、ICT機器の多くは電気がなければ役に立ちません。業務の継続は電気があることを前提とされています。この際に役立ったのが、あらかじめ策定していたICT部門の業務継続計画でした。少ない人数で業務を行っていたからこそ、「もしその時に自分がいなかったら」と、事前に計画を作っておく必要性を日々感じていましたし、この時も、計画に基づき定期的に訓練を行っていたおかげで、正しい初動対応を取ることができたと感じています。情報部門の業務は誰にでも簡単にできるものではないからこそ、いざという時の備えは大切だと思います。

マイナンバー関連業務

 こうした多くの課題を抱える中で、マイナンバー関連業務も進めており、町内のカード普及率は令和2年7月1日末現在で13.0%となっています。正直に言うと制度そのものも難しいですし、頭がすぐに切り替わらずに大変苦労しています。マイナンバー関連業務についてはカードの交付事務の窓口である住民部門が、施策そのものの推進については総務部門が中心に行っており、我々はその後方支援を担っています。具体的には基幹系システムの改修や中間サーバー接続に関するネットワーク運用維持管理など、システム面での関わりが中心です。また、マイナンバーの業務を確実に、かつ安全に進めていくために、年に数回、情報セキュリティ研修を実施し、庁内のセキュリティ向上に努めています。

地域情報及び行政情報(令和2年7月1日現在)

地域情報及び行政情報(令和2年7月1日現在)

  •  ※) http://www.town.yakumo.lg.jp/blog/infomation/